塗装の有無で音色が変わる!? ギターリフィニッシュの基礎知識!

塗装の有無で音色が変わる!? ギターリフィニッシュの基礎知識!


ギターの塗装は、木材の保護や見た目をよくすることのほか、音色の良しあしに関わる重要な要素です。塗装状況が悪くなれば、せっかくのギターのポテンシャルを最大限に引き出せません。そこで、今回はギターリフィニッシュ(再塗装)に関する情報をご紹介します。
  1. ギターの塗装について
  2. ギターの塗装方法
  3. ギター塗装に必要な道具の購入方法について
  4. よくある質問
この記事を読むことでギターリフィニッシュ(再塗装)に関する基礎知識を学ぶことができます。自分で塗装する際の手順などもご紹介しているので、DIYに興味がある方はぜひ参考にしてみてください。

1.ギターの塗装について

なぜギターは塗装を施されているのかご存じですか? この項目では、メリットや重要性など、ギター塗装の基礎知識をご紹介します。

1-1.塗装する魅力とメリット

1-1-1.木材を保護する

塗装の一番のメリットはギターに使われている木材を保護できる点です。木材は湿気で変形や腐食、カビが生えることがあります。また、日光(紫外線)に長期間さらされると変色したりもろくなったりするなど、弱点の多い素材です。ですから、表面を塗装して湿気や日光が直接木材に影響を与えないようにすることが重要となります。特に、日本は梅雨から夏の時期の湿度が高く日差しも強いことから、塗装の重要性はさらに高いと言えるでしょう。 また、塗装は傷の防止にもなります。1度木材に付いてしまった傷は元通りにはできませんが、塗装にできた傷なら塗り直せば元通りにすることが可能です。

1-1-2.木目の美しさをより際立たせる

ギターにおいて木目はとても重要な要素です。実際、木目の良し悪(あ)しでギター本体の値段が数十万円違うのは珍しくありません。ですから、ツヤを出したり色を付けたりして木目の美しさを際立たせてくれる塗装は、ギターにおいてとても重要と言えます。

1-1-3.ギターの音色を変化させる

ギターは弦の振動だけでなく本体自体の振動によっても音色が変わってきます。そのため、塗装をするかしないかでギター本体の振動の仕方も変わってくるのです。塗装の種類や厚みなどにもよりますが、一般的に塗装をしない状態だとクリアーで軽い感じの「乾いた音」になり、塗装をすると中音域に力のある「太い音」になります。

1-2.リフィニッシュとは?

リフィニッシュとは「再塗装」という意味で、主にギターのコンディションを良好に保つことを目的で行われます。

1-3.自分でリフィニッシュする場合のメリット・デメリット

1-3-1.メリット

最大のメリットは再塗装にかかる費用を大幅に削ることができる点です。業者に依頼する場合は、最低でも3万円強はかかります。木目をいかした塗装をするのであれば、5万円以上になることも珍しくはありません。DIYでリフィニッシュすることで、大幅に費用を削減できます。

1-3-2.デメリット

最大のデメリットは「難しい」ということです。木材に傷が付かないように塗装を剥がす技術や、ムラなくキレイに塗装する技術などはなかなか一朝一夕では身につきません。特に、木目をいかした塗装をする際には技術力が顕著に出ます。ですから、特に高級なギターを自分で再塗装する際には大きなリスクが伴うでしょう。 また、リフィニッシュには手間がかかるので、自分でやろうとすると時間がかかります。時間に余裕がない方にとっては大きなデメリットとなるでしょう。

1-4.業者に依頼する場合のメリット・デメリット

1-4-1.メリット

最大のメリットは技術力の高さです。特に木目を生かす塗装は下地(木質)の素材や中塗り剤の肉もち感、そして仕上がり感が重要になってきます。 木質の特徴を活かしながらの塗装は、技術と知識がないとできません。自分でリフィニッシュするのとプロがするのでは、仕上がりがまったく違ってきます。また、失敗するリスクが非常に少ないので、高級なギターでも安心して再塗装できるのも魅力です。

1-4-2.デメリット

一番のデメリットは費用がかかることです。数万円の費用がかかるので、特に学生の方などには大きなデメリットと言えますね。また、業者はほかのクライアントから請け負った仕事も並行して行っているため、依頼から納品までには1~2か月かかるのが普通です。ギターをすぐに使いたい人などにとってはデメリットとなります。

1-5.業者の選び方

塗装業者を選ぶ際に重要となるのは以下のような点です。しっかりと押さえておきましょう。
  1. 料金表があるか
  2. HPに再塗装の実例が載せられているか
  3. 塗装を行った時のリスクなどもしっかりとアドバイスできるか
  4. 対応は丁寧か
料金表の有無は非常に重要となります。どのぐらいの費用になるのかを把握しやすいですし、業者との金銭トラブルになった際の反論材料にもなるからです。また、塗装例の有無は実際に仕上がりがどうなるのかの参考になりますし、実例を挙げても問題ないと自負していることの証明でもあるので、信頼が置けます。また、依頼時の電話やメール対応などで、ささいな質問にも丁寧に答えてくれる業者はアフターサービスもしっかりしていることが多いので安心です。

2.ギターの塗装方法

ギターの塗装は自分で行うこともできます。必要な道具や作業手順をご紹介しますので、挑戦してみましょう。

2-1.必要な道具

2-2.塗料などの選び方

実は、「ギターに合う塗料や道具」というものがあります。下手な塗料や道具を選択すると後に塗膜剥離やギターの音が悪くなったり、塗装自体に失敗したりするので、初心者の方はギター塗装セットなどを業者から購入するのが良いでしょう。

2-3.塗装の手順

塗装の仕方は木目をいかすかベタ塗りかによって違います。この項目では、基本のベタ塗り塗装(木目が出ない塗りつぶしの塗装のこと)の手順を例に出していますので、ご注意ください。

2-3-1.マスキング

まずはマスキングを行いましょう。指板やピックアップ部分など、塗装しない箇所にマスキングテープを貼って養生します。

2-3-2.下地処理

下地処理布ペーパーなどを使って研磨して塗装を落とします。水研ぎか空研ぎかにもよりますが、#240~400程度のものを使いましょう。研磨した際にでる研磨粉はしっかりと払いましょう。最後に下地用の塗料を吹いていきます。ラッカ塗料の方がよい音が出ると一般的に言われていますが、ラッカ塗料は下地の塗装が侵されやすく、失敗した場合修正が難しいので、今回はウレタン塗料にて塗装していきます。素地(木地)から塗装する場合はウレタンサフェーサーが良いでしょう。 今回は塗りつぶしの塗装を行っていきますので、下地の傷などをパテで埋めていきます。

2-3-3.中塗り

中塗り今回の仕上がりは艶ありが希望塗料ということなので肉付きをよくするため、ポリサン塗装を行います。厚塗りを心がけて吹き付け、3~6時間程度乾燥させてください。半乾きの状態で、もう一度多めに吹き付けます。

2-3-4.本研ぎ

#400~800の研磨材を使って研磨します。

2-3-5.カラー塗装

下地の塗料が完全に乾いたら、ウレタンエナメル塗料を使って色を付けます。エナメル塗料とは業界用語で塗りつぶしの塗料のことを意味しています。 使用する塗料の用法に従い、うすめ液で薄めてください。今回はウレタンエナメルホワイト10:1タイプを吹いていきます。 10(主液):1(硬化剤):7(薄め液)の混合比で吹いていきます。 次に、2~3日乾燥させたのちパール塗装を行います。 パール塗装はウレタンクリアーの中にホワイトパール粉を0.2~0.3%混合させて吹いていきます。 ギターの表面に付いたホコリや脂分などをしっかりと取り除いたら、スプレーガンなどを使って吹き付けていきましょう。

2-3-6.クリアー塗装

クリアー塗装最後に仕上げのクリアー塗料を吹き付け、目の細かいペーパー(#800~1000など)を使って研磨したのち、ウレタンクリアーにて最終コートを吹きかけます。
コンパウンドを付けて磨き完全乾燥させたら、ツヤ出しをするために目の細かいペーパー(#2000など)でぶつ取りをしたのち、ウエスにコンパウンドを付けて磨き上げたら完成です。

2-4.塗装のポイント・注意点

一番重要なのは乾燥をしっかりと行うことです(状況によりけり)。吹いた塗装が乾ききらない内に次の塗装を行うと、塗装が混じり合ってムラになったり剥がれたりする原因になります。また、脱脂も重要です。気が付かないだけで、意外と手の脂が付着していることがあります。一見キレイに見えても、必ず脱脂・研磨粉はしっかりと取り除きましょう。

2-5.よくある失敗について

指板やピックアップ部分の養生を忘れて塗装をしてしまう方が多くいます。特に、スルーネックのギターはネックを取り外せないため、注意しましょう。 また塗らなくてもよい場所をマスキングする場合、マスキングテープの種類によっては溶剤に侵されてしまいし、マスキング部分まで溶剤に侵されてしまうことがあるので、マスキングは剥がれやすく、且つ溶剤に侵されにくいマスキングテープを選びましょう。

3.ギター塗装に必要な道具の購入方法について

この項目では、購入場所や道具選びのポイントなどをご紹介します。自分に合った道具を手に入れるための参考にしてください。

3-1.購入できる場所

道具はホームセンターや通販サイトのほか、塗装専門業者などで購入します。ギターの塗装に使う道具はスプレーガンやコンプレッサー、うすめ液など、専門性が高いものばかりです。そのため、道具のラインナップや相談しやすさなども考慮に入れると塗装業者から購入するのが無難でしょう。

3-2.塗料選びのポイント

コンセプトを定めておくことが大きなポイントです。たとえば、塗料を選ぶ際、木目調にするのかベタ塗りにするのか、ツヤ出しするのかツヤ消しするのかなどで使用する塗料は変わってきます。

3-3.道具選びの注意点

適当に道具や塗料を選ぶのは止めましょう。スプレーガン一つとっても、メーカーや形状(口径)の違いで使いやすさが違ってきます。できれば購入先の店員などに相談し、ギターに合った道具を選んでもらうようにしてください。ギター用の塗装セットなどがあれば、それを購入するのも良いでしょう。

4.よくある質問

Q.リフィニッシュに向かないギターはありますか? A.ビンテージギターは出荷時の状態をいかに保っているかが重要です。そのため、ビンテージギターをリフィニッシュすると価値が下がってしまいます。リフィニッシュはおすすめしません。 ただしビンテージ風に塗装したい場合は業者に相談するのもよいでしょう。 Q.再塗装すれば傷は消えますか? A.傷が塗装部分で止まっていれば、リフィニッシュで完全に消すことが可能です。木材までいっている場合は、完全に消すことはできませんが、ベタ塗りが希望の場合は、木材まで傷がいっていても再塗装は可能となります。 Q.DIYで失敗したものでも依頼可能ですか? ​A.失敗の度合いによります。ただし、よほどのことがない限り、対応してくれる業者がほとんどでしょう。 Q.室内でも塗装はできますか? ​A.室内でも可能ですが、塗装ブースなど室内で塗装できる環境設備が整っていればよいですが、塗料の飛散や換気の等の安全面から考えても、基本は屋外で塗装したほうが無難かと思います。 Q.結局、DIYと依頼のどちらがいいのですか? ​A.安いギターであれば、今後のことも考えて自分で行うのも良いでしょう。ただし、高価なギターは失敗が許されないので、できる限りプロに依頼するのが無難です。

まとめ

いかがでしたか? 今回はギターのリフィニッシュに関する情報をご紹介しました。ギターの再塗装ができるようになれば、家具やバイクの塗装などにも応用できるようになります。新しい趣味として始めてみてはいかがですか? もちろん、思い出のギターや高価なギターなど、失敗できないものを塗装したいのであればプロに依頼するのも良いでしょう。今回ご紹介した情報を参考にして、ぜひギターの再塗装を成功させてくださいね。
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